自分の仕事をつくる – 西村佳哲

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■仕事への向き合い方を考える

読後、最初に考えたのは、自分自身の仕事への向き合い方はどうだろう?だった。
この本は、フリーランスや個人事業主へのインタビューで構成されている。だからといって、サラリーマンやパートタイマー、派遣社員は読まなくてもいいかというとそうではない。

インタビューにこたえている方々は、みなさんそれぞれの考えやこだわりがあって、うなずくことも多い。
読んでいると、理想論だとか、才能や運に恵まれた人たちの話に思えてくるかも知れないけれど、それは今の自分と比べるからであって、自分の主観や今の状態・状況などは、いったん脇において、真摯にそれぞれの仕事に取り組んでいる方々の思いや考え、働き方を、素直に受け止めてみる。

そこに見えるのは、仕事そのものはもちろんだけど、みなさんが仕事の向こうにいる「人」を見ているということだ。
なぜなら、すべての仕事の向こうには、必ず「人」がいるんだから。

多くの人が「自分」を疎外して働いた結果、それを手にした人をも阻害する社会ができあがるわけだが、同じ構造で逆の成果を生み出すこともできる。
自分の仕事をつくるp.11より引用

現在、世界に溢れている「こんなものでいいでしょ」という気持ちで作られた物・サービス・情報・メディア。
すべてのものがそうではないし、すべての人がそういう気持ちで働いているわけでもないのはわかりきっている。
けど、生活のため、稼ぐためだけに働くことは、はたして正解なのだろうか?

自分は違うんだけど、会社がそういう会社かもしれないし、部が、課が、上司が、稼ぐことだけを目的に、つまりは数字だけで働いているかもしれない。
数字を軽視しろというのでない。資本主義社会に生きているんだから、数字は大切だ。
ただ、数字だけで働くことに違和感を感じないかな。

本当にやりたいことがあるのに、就活で失敗したから、今の仕事をしているかもしれない。大学も本当に行きたかった学部や学科に行けなかったのかもしれない。
それはそれで理由や動機はどうあれ、あなたが選んだ道だからその道を歩くしかない。
けどね、その道を歩きながらできることはないのかな?
趣味や道楽のことを言ってるんじゃなくて、この本「自分の仕事をつくる」のことを話しているんだから、つまりは、あなたが本当にやりたい仕事をやる道はないのかな?ってことなんだけど。

仕事にするまでに時間が必要なこともあるだろう。いや、むしろ時間が必要なことのほうが多い。
はじめは趣味や道楽でもいいから、もしやりたいことをあきらめて、まったくやっていないのなら、もう一度やってみたらどうだろう?
やるためにどうしたらいいかを考えなきゃいけない。やれない理由はいくらでも出てくるんだから。

ブログやYouTube、手作りのものを売るサイトなど、今は発表する場所はインターネットにもある。
もちろん、現実の場所でなければいけない仕事だってある。

でも、ただやっても失敗するだけだ。
やり方は、その仕事によっていろいろとあるだろうから、調べたり習ったり、転職したり、弟子入りしたりすることが必要だろう。

始める前に、この本を読んでみてほしい。
「仕事」とはなんだろうっていうことを、自分なりに考えるためにも。

そういうものがなくても、今の仕事の仕方、取り組み方、向き合い方を見つめ直すのにも、この本はいろいろな視点、いろいろな考えを提示している。

あえて簡単な言葉にまとめると、
「ちゃんと働く、ちゃんと仕事をするってどういうことだろう」
ってことを考えるきっかけになる。

■目次

まえがき
1 働き方がちがうから結果もちがう
2 他人事の仕事と「自分の仕事」
3 「ワーク・デザイン」の発見
あとがき
謝辞
補稿 10年後のインタビュー
文庫版あとがき
解説 ファックス・ズゴゴゴゴの頃から 稲本喜則
索引
参考文献

■サラリーマン・パートタイマーとして、どう働くか

正直に言うと、本編を読んでいた時、私はこの本に書いていること、インタビューにこたえている方々の言葉は、理想論だなと思った箇所が複数ある。
「んなこと言ってもさぁ」「それはわかるけどさぁ」って思いながら読んだところもある。

けど「補稿 10年後のインタビュー」と「文庫版あとがき」を読んで、改めて読み直したんだ。
単行本にはなくて、文庫版にしかないようなので、読むのならぜひとも文庫版を手にしてほしい。

文庫版あとがきには、この本に対する挑戦的な意見というか感想を届けた方の話しがある。そして、その方へ著者が答えた内容も書いている。

 あの本で僕がなんとしても言葉にしたかったのは(中略)「こんなもんでいい」というような、他人を軽く疎んじる働き方は、人間を互いに傷つけるということでした。
他人を疎んじることは、自分をも疎んじない限り出来ないことですから、そのような働き方を通じて結局は自己阻害の連鎖が深まってゆきます。その人がそこに「いる」感じのしない働き手や仕事が、世の中で増えてゆく。それは僕には耐え難いことです。
自分の仕事をつくるp.320より引用

引用が長くなってしまったが、この本の全ては上記の引用にある。
仕事は何をするか、何をつくるかの前に、仕事にどう取り組むか、どう向き合うか。
今はもうすでに、こういう時代に入っている。

私も自分がやりたいことをやる。
そう決めたとき、この本に出会った。
道は暗く、長いけど、遠く向こうに見える微かで小さな光へ向かって、この本で学び、気づいたことを胸に、進んでいく。

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