小説

子供が大学に入学した年、涼子は離婚した。

ライブ配信をしている人向けの、防音部屋付きの2LDKのアパートを2棟建て、同じくライブ配信をしている人向けに、防音室が6つあるスタジオを経営していた。

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出版社に自分の収入がばれる前に、涼子は結婚した。

親の紹介で、有名携帯電話会社に務めている男だった。

「つまんない人よ。朝から晩まで仕事をして、帰ってきたらネット見ながらご飯食べて、お風呂に入っ ...

小説

いやおうにも時は流れる。

涼子と俺は違う大学に進んだが、学部は同じく文学部だった。

お互い、彼氏も彼女もできた。それでも、俺たちは1ヶ月に1度は会っていた。ふたりとも慎重だったし、警戒していたか ...

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夜の10時。

このへんに住んでいる人は寝るのが早く、あたりはすっかり静かだ。

長い梅雨は明ける気配がなく、いっこうに夏が来ないまま、蒸し暑い夜が続いている。

汗をかいているわけではな ...