白い部屋で月の歌を – 朱川湊人

 

Contents

■白い部屋で月の歌を 感想
静かな空気感のまま進む物語

霊能力者シシィのアシスタント、ジュン。
シシィがその場にいる霊をはがし、その霊が他の場所に行かないようにジュンの体内に入れる。
ジュンは、自分の内側に白い部屋があり、そこに霊が入ってくる感覚がある。
逃げ場がなくなった霊をシシィが抜き取り、位牌などに入れて、糸を巻いて封じる。

ある日、事件の被害者で、生きたまま霊魂が抜けた少女を救うが、ジュンはその少女に恋をする。
しかし……

物語は一人称の語りで、静かな空気感のまま進む。
思っていた種明かしだったけれど、場面が浮かぶ美しい文体は、最後まで読まなくては気がすまなかったし、惹きつけられた。

ホラーを読んだのは久しぶりだったけど、衝撃だとか過剰さだとか、残酷さや物珍しさや意外性が抑えられていても、このような物語ができるんだなと思ったよ。

鉄柱(クロガネノミハシラ)の感想は目次のあとで。

 

■目次

白い部屋で月の歌を
鉄柱(くろがねのみはしら)
第10回日本ホラー大賞受賞時選評

 

■鉄柱(くろがねのみはしら)感想
とても良い人たちが住む田舎の町の風習

不倫がバレて左遷された雅彦。妻には会社の政治的ないざこざだと言っている。
左遷先は人口が少ない小さな町。
自然が美しく、空気がきれいだが、個人の商店しかないようなところだった。

過剰とも言える引越し祝いを町中からもらい、気味悪さを感じたが、その時だけで、定時で終わる仕事、妻とゆっくり過ごせる時間、妻も町でやりがいをみつけ、引っ越してよかったと思える日々が続いた。

引っ越してからしばらくしたある朝、雅彦は、日課にしていたマラソンで、首を吊って亡くなっている高齢の女性を見つける。
そこから、再び違和感が大きくなっていく……

こちらも、正直、途中でラストが読めたんだけど、それでも物語の最後がどうなるのかが気になり、最後まで読まされた感覚があった。

田舎の小さな町に、昔から残っている風習。
この物語はその風習が、少し変わっている。
そして、直接言葉で書いていても書いていなくても、その風習に囚われている人々の悲哀が、伝わってくる場面などは登場人物の感情が伝わってきてせつなかった。

 

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