思考の整理学 – 外山滋比古

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■本当に伝えたいことは思考の整理法ではなくて

この本、『思考の整理学』というタイトルだから、タイトルそのままの内容なんだろうと思って読んだんだよ。たしかに思いついたことは、とりあえず全部メモって、そのあと二度、メモの断捨離をする方法とか、これだって思ったアイデアは、すぐに使わずに、いったん寝かせて熟成させたほうがいいとかってことも書いてる。

けど、この本で著者が言いたいことって、他にあるんだよ。
それは一番最初の「グライダー」に書いてある。

ところで、学校の生徒は、先生と教科書にひっぱられて勉強する。(中略)いわばグライダーのようなものだ。自力では飛び上がることができない。
『思考の整理学』 p.11「グライダー」より引用

そして、数ページ後にこう書いている。

この本では、グライダー兼飛行機のような人間となるには、どういうことを心掛ければよいかを考えたい。
『思考の整理学』 p.15「グライダー」より引用

っていうことなんだよ。

この本を読んで思ったんだけど、与えられたことを処理する能力、言われたことをこなす能力が高いのはグライダー人間。学校の勉強ができるだけのタイプの人間だ。
自ら問いを立てて解決する力や、与えられた情報に疑問をもつ力は、やがて自分の人生を自分で切り開く力になる。
でも、グライダー人間のままだと、いくら学校の勉強ができても、与えられたことを処理する能力だけが向上するだけだ。
これは、国にとっても企業にとっても都合がいい。
自ら問いを立てたり、疑問に思ったことを、自分でどうしたらよいのかを考える能力は育たない。
学校で良い成績を取り続け、一流といわれる企業や第一種国家公務員になっても、上司から与えられた仕事をちゃんとこなすことができる「優秀な」人材に育つんだからね。

もちろん、タイトル通りに、思考の整理法についても、多くのことが書いている。
あなたが確立していて、それで結果が出ている方法があるのなら、わざわざこの本を読むことはない。ってわけじゃない。
この本に書いてあることで、やってみたことがないものがあったらやってみるのもいいと思うよ。
その方があなたにあったやり方かも知れないし、最初のうちはめんどくせぇ~って思っても、やってみたらこの本に書いている方法が確実だったり、結果が出るかもしれない。

でもね、やってみなきゃわからないんだよ。一週間とかじゃなくて、2、3ヶ月位は。そうじゃなきゃ、この手の本に書いていることすべてに言えるんだけど、何が良いか、自分に合ってるかどうかっていうことが実感としてつかめないものだから。

目次をはさんで、私がためになった、気づきがあったところをもう少し話そう。

■目次

グライダー
不幸な逆説
朝飯前
醗酵
寝させる
カクテル
エディターシップ
触媒
アナロジー
セレンディピティ
情報の“メタ”化
スクラップ
カード・ノート
つんどく法
手帖とノート
メタ・ノート
整理
忘却のさまざま
時の試錬
すてる
とにかく書いてみる
テーマと題名
ホメテヤラネバ
しゃべる
談笑の間
垣根を越えて
三上・三中
知恵
ことわざの世界
第一次的表現
既知・未知
拡散と収斂
コンピューター

 

■人間にしかできないことってなんだろう?

最後の「コンピューター」では、ここ数年しきりに騒がれているAI問題のさきがけ的なことが書いてある。
コンピューターは計算能力も記憶力も人間以上だ。近い将来、今の仕事がなくなる時が来るだろう。その時がきたら、どんな仕事が残るのだろうか。
というようなことを書いている。
この本の初版は1986年だ。第二次AIブームが訪れていたときだった。

結果的にはこの時点ではまだなくなると言われている仕事はなくならなかった。
今でも事務も接客もコールセンターも士業も残っている。

とはいえ、なくなりつつある仕事があるのもたしかなんだよね。
大手の銀行ではコールセンターにAIを導入している。で、何をしているかといえば、お客様とコールセンターのやり取りをAIが聞いて、どうすればよいのかをコールセンター側に提示するってことをやってる。
便利だと思うかもしれないけど、これ、人間がAIに使われているってことだよね。

無人のコンビニも試験されているし、無人運転技術も飛躍的に伸びてきている。
MRIなどで写した画像や血液検査の結果などを元に、世界中の人間の医師の診断結果を参考にして、AIが治療法を提出する試みも行われている。

人は考えなくてもよくなる。
楽だね。便利だね。

で、その時、人はどんな仕事をして収入を得るんだろう。
その時、どんな仕事が残っているんだろう。

というわけで、さっきも言った「人間にしかできないことってなんだろう?」って問いになる。

著者の外山滋比古さんは創造力だって言ってる。

私もそう思う。
想像力と創造力。
これが人間にしかできないことなんじゃないか。

でも、これすらも危ういんだよね。
なぜなら、AIに小説を書かせる実験や絵を描かせたり、映画を作らせようとしているから。
今はまだまだ人間に及ばない。

そうなったら、こう考えてみたらいいのかもしれない。
人間にしかできないんじゃなくて、人間と「AIにも」できることだって。

グライダー人間のままだと、この先、ますます厳しくなる時代がやって来るんじゃないかな。

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