dele2 – 本多孝好

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■死者の記録と生者の記憶

『dele』に続き、この『dele2』も、自分の死後に削除して欲しいデータを依頼した人と、依頼した人と繋がりのある人をめぐり「dele.LIFE」の所長、坂上圭司と唯一の従業員、真柴裕太郎が関わっていく。
新薬の治験中に亡くなった裕太郎の妹、鈴。
ある日、dele.LIFEに鈴が通っていた大学病院の元教授からの依頼が発動する。
明かされていく真実の果てにあるのは、いったい何なのか。

死者の記録と生者の記憶が織りなす物語は、この巻でいったん幕を引く。
いや、これで終わりなのかもしれないけど、個人的に終わってほしくないし、ぜひとも続けてほしい。
あのラストなら、それはちょっと難しいかもしれないけど。

『dele』のときから、帯にはすでにドラマ化の告知と共に山田孝之さんと菅田将暉さんの写真が載っていたので、読んでいるときも2人が話し、動いていた。
素人の私が浮かべる動きとセリフだから、じっさいのドラマはきっともっとおもしろいはず。
という期待も高まる。
2018年7月からテレビ朝日系、金曜夜11時15分から。
この枠『トリック』とか『時効警察』とか、私的には数年に1度大当たり。今回も久しぶりにはまりそうだ。

目次のあとは、もう少し内容に突っ込んだ感想を。
ちょっとでもネタバレ読むのが嫌なら、ここで読むのをやめてください。

■目次

アンチェインド・メロディ
ファントム・ガールズ
チェイシング・シャドウズ

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■生きる苦しさ、辛さとやるせなさ。
生きるチカラ、希望とぬくもり。

目次の前にも書いたけど、ここからはじゃっかんのネタバレありなので、まだ本を読んでいない、または、ドラマを見るまで我慢するって人は読まないこと。

いちおう、3行改行したので、感想を話していく。

アンチェインド・メロディとファントム・ガールズは対象的な物語だ。
一方は生者の思いが死者よりも、もう一方は死者の思いが生者よりも、優しく大きい。
そしてそこにあるのは、言葉にするのはこっ恥ずかしいが「愛」だ。

そしてこの「愛」は、チェイシング・シャドウズでいくつかの形として描かれる。
愛ゆえに犯した間違い。
愛ゆえに歪んだ人生。
愛ゆえに壊れた家族、人。

愛は素晴らしい。
私もそう思う。
しかし、ときに愛は人を狂わし、人生を曲げる。
思いが強ければ強いほど、可能性は高くなる。

不器用といえばそれまでだ。
あの時、あの人はこういう気持ちで、こういう思い出、こういう考えで、あのようなことを言った(やった)んだな。
不器用な人ほど、そのことに気づくのには時間がかかる。
私も不器用だから、そこはよくわかる。

ふと「あ、この人は今、こういう思いで言ってるんだな」ということがわかる時がある。そしてそのとき同時に、10年以上前に付き合っていた人が言ったことや、ふとしたときのしぐさが浮かぶ。
そして思うんだ。
「ああ、あの時この事に気づいていたら、もっと違っていたのかな」って。

何かがもう終わってしまったあとでは、10年以上という時が過ぎてしまっては、その人へはもう何もすることができないことがほとんどだ。
できることといえば、その気づいたことを忘れずに、今目の前にいる人や、これから出会う人へ向けること。
もちろんそれは、良いことでなければいけない。良くないことは、これから先の予防や防御へとなる。

生きることはけっして楽ではない。
辛いことも苦しいこともたくさんある。やりきれないときもある。
生きている人どうしでも、思いや考えの違いやズレもある。
一人で思い込んでいたことが、じつはまったく違っていたということもある。

それでも、生きることには価値がある。
死んだらどうなるのか?
なにもない、無の世界へ散っていくのか、魂が悟りを開き解脱するまで輪廻転生を繰り返すのか、天国や極楽や地獄へ行くのか。それは死ななきゃわからない。
だって、生き返った人や臨死体験をした人の言葉を信じるのなら死後の世界はあるのだろうし、信じないのならそれはやはり自分が死ななきゃ真相はわからない。

それなら。
死後のことはおいといて、今、生きている自分の人生をなんとかする、どうにかする。今よりもちょっとでも明るいところへ、自分が行きたいところへ行こうと、あがいてもがいていたほうが、よっぽど人間的だ。

どんな暗闇にでも、どこかに微かな光はある。
その光は肉眼で見る4等星や5等星のように、儚くて弱くて、消え入りそうな光かもしれない。
でも、その光を見失わず、一歩一歩慎重に、手探りで、足元に気をつけて進めば、いつかやがて、近づくにつれて光は輝きを増す。

チェイシング・シャドウズで明かされた真柴裕太郎の妹に関する真実を知った時、裕太郎が選択したことは、正解とは言えないかもしれない。
でも、間違いでもない。
きっとあの選択は、裕太郎がこれからも生きていくために、前に進むために必要な選択だった。

っていうか、もう続編でないのかな、これ。
物語的にはたしかに終わってるけどさ。
もっと読みたいなぁ。
坂上圭司と真柴裕太郎の物語。

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