キャラクター小説の作り方 – 大塚英志

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■小説の読み方が変わる。
小説の書き方ではなく作り方。

小説を書こうと思っていない人も、この本を読むことで、小説の書き方の一端を知ることができる。
小説を書こうと思っている人も、書いている人も「物語の構造」と聞いてピンとこないなら読んだほうがいい。
純文学もエンタメ系の小説も、じつはこの本に書いていることを応用すれば「それなりのもの」ができる。「それなりのもの」以上のものを書くには、多くの小説を読むことと、書くことを学びながら、考え、書いてみる、書き続けることが必要だけれど。

著者はまず「キャラクター小説」を定義する。
角川スニーカー文庫をはじめとする、表紙にアニメ画を使っている小説のことを指している。けど、純文学も、表紙にアニメ画を使っていないエンタメ系の小説も、この本に書いていることと通じるところがあると、はじめの方にしっかりと書いている。
何がどう通じるのかは、もちろんここで言うわけにはいかないので、本を読んでもらう。

キャラクターの作り方については、キャラクターとはパターンの組み合わせだと言ってる。
手塚治がずいぶん前に書いた雑誌の付録を例にして解説している。
パターンを見つけ、組み合わせ、なぜそのような外見なのかと考えていくやり方だ。

このやり方でキャラクターを作ることによって、そのキャラクターに関する物語ができあがっていく。
「世界観」を作ることについても解説しているので安心してほしい。

前半は、表紙にアニメ画を使っている小説の書き方に重点が置かれている。小説の書き方と言っても、タイトル通り、キャラクターの作り方についてもわかりやすく説明してくれている。
後半からじょじょに「表紙にアニメ画を使っていない小説」との接点、共通点がちらほらと盛り込まれていき、最終稿では目次のとおり「近代文学とはキャラクター小説であった」という論になる。

小説を読むのが好きな人なら、書きたい、書いてみたいという気持ちを持つ人が多いと思うんだよ。あなたはどうだろう?
でも、いきなり書き始めるんじゃなくて、この本を読んで、できればこの本の次に、同じく大塚英志さんが書いた『キャラクターメーカー』と『ストーリーメーカー』を読んで、実践に移してみたらいいと思う。
『キャラクターメーカー』と『ストーリーメーカー』は、実践するための本だ。『ストーリーメーカー』は本の半分以上がストーリーを実際に作るためにある。読むためだけに買っても損をする。

他にも多くの人が小説の書き方について本を出しているけど、私の個人的な意見として言うと、大塚英志さんの一連の本を読んで、本に書いていることを頭に置きながら、すでに出版されている本を何作か読んで、短くてもいいから自分で何作か書いて、その後にやっと、他の方々の小説の書き方本を読むことをすすめる。

なぜかってことは、目次のあとに話そう。

■目次

第一講 キャラクター小説とは何か
第二講 オリジナリティはないけれどちゃんと小説の中で動いてくれるキャラクターの作り方について
第三講 キャラクターとはパターンの組み合わせである
第四講 架空の「私」の作り方について
第五講 キャラクターは「壊れ易い人間」であり得るか
第六講 物語はたった一つの終わりに向かっていくわけではないことについて
第七講 テーブルトークRPGのように小説を作る、とはどういうことなのか
第八講 お話の法則を探せ
第九講 「世界観」とはズレた日常である
第十講 主題は「細部」に宿る
第十一講 君たちは「戦争」をどう書くべきなのか
第十二講 近代文学とはキャラクター小説であった
補講1 「9・11後の世界」と再物語化する世界
補講2 宮崎駿における「物語の構造」とは何か
新書版あとがき
文庫版あとがき

■物語の法則(構造)

物語には法則がある。
表紙にアニメ画を使っている小説にも表紙にアニメ画を使っていない小説にも、映画にもアニメにもストーリーがあるゲームにも共通した法則なんだよ。

この本ではおもにウラジミール・プロップが著書『民話の形態学』に書いたことをもとにして解説している。ちなみにこの『民話の形態学』は買わなくてもいい。本書の解説でじゅうぶんだし、ウィキペディアでも調べられる。

この物語の法則を、「姥皮」という昔話と川端康成の『伊豆の踊子』、宮崎駿の『千と千尋の神隠し』の3つを比較しているんだけど、これがわかりやすい。
中上健次も村上春樹もこの物語の法則を使って書いている。
お二方の作品は法則を複雑に変化させているんだけど。

その法則ってなにかっていうのは、これももちろんここで詳しく話す訳にはいかないから、本書を読んでほしい。

さて、ここからは私個人の感想だ。

物語の法則には、有名なものがもう一つある。この本でも触れられているけど、ジョーゼフ・キャンベルが『千の顔をもつ英雄』『神話の力』で明らかにしたヒーローズ・ジャーニーという法則だ。
『スター・ウォーズ』シリーズをはじめ、多くのハリウッド映画はこのヒーローズ・ジャーニーの法則にのっとって作品を作っている。

作り方に関する本も出ている。
『神話の法則』という本なんだけど、この本、Amazonや楽天で買うと古本を定価以上の値段で買うことになる。
どうしても読みたいのなら、在庫がなくなり次第、販売停止するそうだけど、以下のサイトで買える。
とはいっても、定価で税込3,780円だ。

ストーリーアーツ&サイエンス研究所
http://www.story-arts-sciences.com/

同じ著者が書いたものでは『物語の法則』がある。
ところどころに詳しくは『神話の法則』を読むようにと書いているけど、読まなくても大丈夫な内容だ。
この『物語の法則』は、Amazonでも楽天でも定価で買えるので安心してほしい。大きな本屋なら映画や脚本のコーナーに置いているかもしれない。

『神話の法則』も『物語の法則』も映画の脚本を書くための本だけど、物語を作るのならなんにでも使える。
この法則を使って、実話を入れた広告だってある。
ジョーゼフ・キャンベルは、物語に使ってほしかったのではなく、私たちがこの人生を生きるために使ってほしかったらしいけど。
人生にどうやって使うのかは『千の顔をもつ英雄』『神話の力』『生きるよすがとしての神話』を読んでほしい。

物語を創る、書くという行為は、自分のために書けば自分を見つける、見つめ直すことにつながる。
誰かのために書けば、誰かを喜ばせる、楽しんでもらうものにつながる。
これらの本を読んだからと言って、売れる作品が書けるわけではないけれど、読んだら書いてみたらいい。
どこにも発表しない、誰にも見せないのもいいけれど、投稿サイトに投稿してみたり、応募してみてもいいんじゃないかな。

楽天ブックスはこちら→2019/01/16現在、古本のみ取り扱いあり

Amazonはこちら→キャラクター小説の作り方 (角川文庫)

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