ストーリーメーカー – 大塚英志

Contents

■物語論を読むだけじゃなく、物語を物語るための本

大塚英志さんの物語創作に関する本は『物語の体操』→『キャラクター小説の作り方』→『キャラクターメーカー』→『ストーリーメーカー』の順番で読むとわかりやすいと思う。私は『物語の体操』は読んでいないんだけど、『キャラクターメーカー』→『キャラクター小説の作り方』→『ストーリーメーカー』の順番で読んで、各本に過去の著作に関して触れているところがあったのを組み立てると、上記の順番になる。

で、この『ストーリーメーカー』はタイトル通り、物語を創るための物語論であると同時に、本を読みながら(もちろん一度読み通してからでもいいんだけど)、物語をつくっていく実践書でもあるんだ。

第一部では5つの物語論を解説している。それぞれの章にはその物語論の参考になる、もしくは要約した本のタイトルが載っている。
物語論を研究するのなら、それぞれの本も読んだほうがいいというか、読むべきなんだろうけど、物語を書きたいのなら、最初に挙げた大塚英志さんの著作の4冊を読んで、創作に取りかかったほうがいい。

第二部は物語を創るために、具体的な質問と、大塚英志さんが教えた学生の一人の解答例を解説している。
ここも一度最後まで読み通してから、改めてQ1から自分で順番に答えていくことで、物語の具体的なプロットができあがる。
あとはそのプロットに沿って小説、脚本を書くだけだ。

といっても、私の個人的な考えでは、一度読み終わった後に、もう1ステップ入れたい。
それがなにかってのは、目次の紹介のあとに話そう。

ちなみに私が読んだのは、サムネイルにあるとおり、アスキー新書版。今は星海社新書から刊行されているらしく、最後の「補講「物語」は何故畏怖されるか」がないんだよね。書店で見つけたら立ち読みしよっと。

■目次

はじめに 人は機械のように物語ることができる
第一部
第一章 創作のための五つの物語論(物語の基本中の基本は「行って帰る」であるー瀬田貞二『幼い子の文学』
第二章 物語を構成する最小単位とは何かーウラジーミル・プロップ『昔話の形態学』
第三章 英雄は誰を殺し大人になるのかーオットー・ランク『英雄誕生の神話』
第四章 世界中の神話はたった一つの構造からなるージョセフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』
第五章 ハリウッド映画の物語論ークリストファー・ボグラー『神話の法則』
第二部
ストーリーメーカーー30の質問に答えてあなたの物語をつくる
第一章 主人公の内的な領域を設計する
第二章物語の構造を組み立てる
補講
「物語」は何故畏怖されるか
巻末付録 書き込み式「ストーリーメーカー」

■自分の物語を物語る前に

『ストーリーメーカー』第二部を、自分の物語を作る前にやっておいたほうがいいと思うこと。
それは、すでに作品として出版されていてある程度以上売れている、もしくは大ヒットした作品を読みながら、第二部の各質問に答えていくってことだ。
中には読み終わってからじゃなければ答えられない質問もあるから、書けないところは飛ばして、書けるところを随時埋めていく。

小説といっても、文学ではなく、エンタメ系のほうがわかりやすい。文学は法則を変化させていることが多いから。
小説の他にもやったほうがいいのは、ハリウッド映画や一話完結ものの海外ドラマ。
一話完結ものだったら、観るのは一時間もかからないし、たいていDVD1枚に3話入っているから、いいかもしれない。

数学の方程式を習っても、いきなり応用問題解けって言われてもできない(もちろん、羨ましいけど解ける人もいる)。
教科書では、方程式の解説があって、そのあと例題が何問かある。それを解いて、そこから少しづつ難しい応用問題を解いていく。

プロはどうやって物語をつくっているのか、大ヒットした小説や映画はどんな作りをしていたのかってのを知ることで、気づきや参考になることも多いはずだ。
何作かやってみて、なんとなくそういうことかってわかってから、自分の物語を創ってみると、急がば回れで、何もやらないよりもいいものができるから。

前回のキャラクターメーカーの感想でも書いたけど、大塚英志さんの一連の物語論や創作術を読んでも、売れる作品を書けるようになるわけじゃない。けどね、創作ってのは、誰かに見せなくても何かしらやったほうがいいものだって、私自身思ってるんだ。小説でも絵でも彫刻でも版画でも、何かしらのアートでも、写真でも、音楽でもダンスでも、創作ジャンルの中の何かをやるってことだ。

それは、自分を知ることであるし、自分に見えているものと自分が感じていることを知ることでもあるから。
そして、それを知ることができれば、自分はどう生きたいかとか、次は何をすればいいかとか、そういうことも見えやすくなる。そう、見えやすくなるんであって、見えるようになるとは断言できない。
けど、見えやすくなるだけでも、生きやすくなるよね。

小説を書いて、書いた小説で収入を得たいとなったら、自分のためだけに書くわけにはいかない。誰かのために書かなければいけない。
友人だったり恋人だったり、子供だったり、親だったり、祖父母だったり。何かに対してのファンに向けてだったり、何かについて悩んだり迷ったりしている人に対してであったり。

そうなると、誰に向けて書く物語なのかで、世界観もキャラクターも変わる。もちろんストーリーだって変わる。
同じことを言いたくても、対象が違えば、作品も違うものを創らなければいけない。

っていうことをね、過去の私は知らなかったり忘れたりして、法則や構造も知らなかったこともあったりして、10年くらい毎年新人賞に応募しても、1次予選通過が3回っていう結果だった。
仕事が忙しくなったりとか、いろんなことがあって、10年以上小説書いてないんだけど、去年から書こうかなって気持ちがまた出てきてね。
今年に入ったら、書こうって決意に変わってた。

本をほとんど読まなかった数年を経て、昨年までの3年間は小説以外の本を中心に読んできた。昨年の11月くらいから、一通り物語論や創作術に関する本を読んだから、次は小説を中心に読んでいく。
私が書こうと思っているものを書く準備に取り掛かるのは、来月後半から3月。それまでは、もうしばらく読むことにする。
この『ストーリーメーカー』を傍らに置きながらね。

楽天ブックスはこちら→ストーリーメーカー 創作のための物語論 (星海社新書) [ 大塚英志 ]

Amazonはこちら→ストーリーメーカー 創作のための物語論 (星海社新書)

スポンサーリンク