キャラクターメーカー – 大塚英志

2020年4月8日

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■小説や映画、アニメ、ゲームのキャラクターが魅力的に見える理由

10年以上前まで、私は小説を書いていた。
書いていたとはいっても、本になったことはない。新人賞も1字予選は3度通過したけど、それだけだ。
なぜ2字選考を突破できないんだろうと考えていたんだけど、当時はこれといった理由が見つからなかったんだ。
けど、今ならわかる。
自分が書きたいことしか書いていなかった。つまり、独りよがりなものしか書いていなかったから。
他にもある。
ストーリーの作り方やキャラクターの作り方など基本的なことをちゃんと学ばずに、ただただ書いていたからだ。

才能がある人や、ストーリーの構造を見抜ける人なら、純文学は別として、2次選考を突破できる確率が高い。でも私には持って生まれた才能はなかった。努力だけはしていたけど、努力の仕方がわかっていなかった。
当時の努力は、ただただ本を読み、こういうものだろうと自分が書きたいことを書きたいように書いていただけだったんだから。

そして今、私は再び小説を書こうと決意した。
そして問題は複数ある。
以前と同じ過ちを繰り返さないために、基本を学ぶこと。
10数年、ブログを書くことはしていたけど、小説を書いていないこと。
小説をほとんど読んでいないこと。

致命的といえば致命的な問題ばかりだけど、それでも小説を書くことを決意したからには書く。

というわけで、最初に読んだのが、当時から苦手だったキャラクターを作る方法の基本を学べる、大塚英志さんの『キャラクターメーカー』だ。

私が書きたいジャンルではなく、角川スニーカー文庫や新潮NEXT文庫、ラノベやアニメ、ゲームなどのキャラクターの作り方について書いているんだけど、もちろんこれら以外のジャンルにも使える。
サブタイトルの『6つの理論とワークショップで学ぶ「作り方」』のとおり、キャラクターの作り方を6通り学べて、かつ、作ることもできる。
8面体のサイコロを振ってランダムに組み合わせたり、各章の理論に基づいて作ったりするんだけど、作っているうちにストーリーが浮かんでくるのがおもしろい。

目次の紹介のあと、話を続けるよ。

■目次

序 「キャラクター」とは「デザイン」するものではない
第1講 アバター式キャラクター入門
第2講 トトロもエヴァンゲリオンも「ライナスの毛布」である
第3講 手塚キャラクターは何故テーマを「属性」としているか
第4講 雨宮一彦の左目にバーコードがあるのは何故か
第5講 自分からは何もしない主人公を冒険に旅立たせるためのいくつかの方法
第6講 影との戦い
補講 キャラクターは「戦略」になるか?

■キャラクターが先かストーリーが先か

歌を作るときには詩が先か曲が先かで分かれるらしいけど、この本を読めば、ストーリーが先かキャラクターが先かで分かれる。そして、この本はタイトルからもわかるとおり、キャラクター重視だ。
先にキャラクターを作る。作るときには、キャラクターのバックボーンも考えることになっている。

なぜキャラクターが先かというと、最初のあたりにも言ったとおり、この本がラノベやアニメ、ゲームのキャラクターを作ることについて書いている本だからだ。
これらのジャンルは、ストーリーがおもしろいのはもちろんだけど、キャラクターが愛される。
グッズが販売されたり、人気があるキャラクターを表紙にすることで本が売れたりする。
小説からアニメ化、映像化されることもある。
逆に、アニメやゲームをノベライズしたりもする。
魅力的なキャラクターが複数登場することで、誰が好きかを話題にして盛り上がることもできる。

キャラクターを作り、バックボーンを詳細に作り込むことで、ストーリーが見えてくる。
あとはその見えたストーリーを、神話の法則や物語の構造に従って作っていく。
神話の法則・物語の構造については、この本でも触れているけど、ジョーゼフ・キャンベルやウラジミール・プロップが提唱した、神話や物語に見る構造のことだ。

これについては、賛否あるんだけど、スター・ウォーズなどの代表的なハリウッド映画はこの法則に従って作られている。
村上春樹さんの作品や中上健次さんの作品、スタジオ・ジブリの作品にも見られるものだ。
これについて学びたいのなら、『神話の法則』『物語の法則』や、ウラジミール・プロップの『民話の形態学』、この『キャラクターメーカー』の姉妹版でもある、大塚英志さんの『ストーリーメーカー』を読んで見ればいい。

ラノベではないエンタメ系の小説も、これらの法則や構造に従って書いているものが多い。

ストーリーが先だと、ストーリーに合うキャラクターを作ることになる。
この場合は、この『キャラクターメーカー』に書いていることをそのまま使っても、キャラクターを作ることはできないんだけど、そのヒントは、この本をちゃんと読んで、6つのワークショップすべてを、真剣にやった人なら応用できるはずだ。

小説を書かない人でも、この『キャラクターメーカー』と『ストーリーメーカー』を読めば、今後、小説を読んだり映画を見るときに読み方や見方が変わる。

なにはともあれ、この本を読んで、6つのワークショップをやったことで、書けるかなと思っていたのが、書ける、書こうという気持ちにランクアップしたよ。

最後に注意。
サムネはアスキー新書版になってるんだけど、以下のリンクは星海社新書版。現在は星海社で刊行されているからなんだけど、古本を検索すればアスキー新書版も見つかる。
違いは、アスキー新書版には、星海社新書版の最後にある「補講 キャラクターは「戦略」になるか?」がないということだ。

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