神話の力 – ジョーゼフ・キャンベル&ビル・モイヤーズ

Contents

■神話の意味、構造、そして私たちにもたらす力

世界中に残っている神話には、共通の構造があり、共通した主題や題材がある。それらは、私たちの無意識にもあり、現在の世界、社会の基盤になっているし、思想の根本にもつながっている。
『千の顔をもつ英雄』の著者、神話学の巨匠であるジョーゼフ・キャンベルに、広く深い知識をもつビル・モイヤーズが聞き手として、私たちにもわかるように、神話がもつ力、神話の意味、構造を明らかにする。

また、本書は多くの作家、脚本家など物語を創作する人々に読まれている。
なぜなら、神話は物語の原型であり、ユングがいうところの元型(アーキタイプ)だからだ。
多くの古典、現代の小説、ハリウッド映画、アニメには、この『神話の力』と『千の顔をもつ英雄』で語られている「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」という神話の構造をもとに作られているものが多い。

本書でも取り上げられている映画『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカーは、まさに英雄の旅の構造通りに行動しているし、魅力的な脇役もこの英雄の旅の構造通りに配置されている。
物語はまったく違うが『マトリックス』『ダ・ヴィンチ・コード』も同じ構造で創られている。
ゲームもシナリオもだ。
ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーをはじめ、多くのゲームのシナリオも、この英雄の旅の構造だ。

創作に興味があるのなら、また、創作をしているのなら、『千の顔をもつ英雄』『神話の力』は読んでおくべきだ。それが趣味であろうと本気であろうと。
また、著者は違うが物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術 [ クリストファー・ボグラー ]も参考になる。

この『神話の力』でジョーゼフ・キャンベルは、神話の構造についてだけを語っているわけではない。
生きるために神話がどう役に立つのか。そもそも神話はなんのために生まれたのか。そして、私たちに何をもたらしてくれるのか。
すぐれた聞き手であるビル・モイヤーズの質問と相づちに、ジョーゼフ・キャンベルがこれらを語っている。

生きることとは、ただただ毎日を生きるのではなく、個人個人違う、あなたの自分の至福、無上の悦びを追い、ほんとうに生きている経験をして生きることだ。
また、自然と調和し、互いに思いやりの心をもつこと。

これは、けっして自分の外からはやってこない。
自分の内側を見つめ、探さなければ見つからない。
そして見つけたら、そのあなたの至福、無上の悦びを追求するために、外へ向けて行動する。
行動する際は、自然と調和すること。そして、思いやりの心をもつことだ。

目次の紹介のあと、もう少しこの『神話の力』を読んだ感想を続けよう。

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■目次

第1章 神話と現代の世界
第2章 内面への旅
第3章 最初のストーリーテラーたち
第4章 犠牲と至福
第5章 英雄の冒険
第6章 女神からの贈り物
第7章 愛と結婚の物語
第8章 永遠性の仮面

■少年よ神話になれ

いや、あの超有名アニメを語るつもりはない。
でも、あの超有名アニメ(エヴァン○リオン)も、まさしく神話の構造、神話の法則に則って創られている。

そして、その神話が扱うであろうことは、あらゆる神話がこれまで扱ってきたものと全く同じです。個人の成長-依存から脱して、成人になり、成熟の域を通って出口に達する。そしてこの社会との関わり方、また、この社会の自然界や宇宙(コスモス)との関わり方。それをすべての神話は語ってきたし、この新しい神話もそれを語らなくてはなりません。
        『神話の力』第一章 神話と現代の世界p.97より引用

昔はこうだったなんていう言い方はしたくないが、あえて言う。
かつての日本は、自分で考え、たとえリスクや失敗の可能性があっても行動し、壁や障害を乗り越えるための努力や苦労をおしまない人が、今と比べると多かった。
なぜこうなったのかとか、何が理由なのかとかは、話がズレるのでここでは言わないけど、この日本という国と国民は、精神面でずいぶん弱くなった。
その理由を一つだけ言えば、上記の引用文の中にある。
「依存から脱して、成人になり、成熟の域を通って出口に達する」
この最初の「依存」から脱することができない人が増えた。
家庭への依存、学校への依存、会社へ依存、友達に、恋人に、上司に、国に都道府県に市町村に、社会全体に、タバコにギャンブルに性に酒にイケない薬に、そう、依存というのは、道徳的に良くないことだけではない。
「何かをしてもらって当然」という思い。
「そこから離れることへの不安や恐怖、それをなくすことの不安や恐怖」だって、一概には言えないが、依存の一面が含まれている可能性もある。

自分の外側に向かって何かを求めているあいだ、依存は続く。
白馬に乗った王子様を、天や神に願うだけで何もせずにただただ、いつまでも待っていたり、人生逆転を宝くじで高額当選することだけに頼っているようなものだ。

願うだけで叶う、願うだけで変わるのなら、世界中でどれだけの人が願いを叶えていることか。

大事なのは内側だ。
自分の内側を見つめることだ。

エヴァンゲリオンのシンジくんが、いつまでたってもあんな感じなのは、彼がいつまでも誰かや何かに依存しているからだ。
しかし、たまに見せる決意や、暴走した時、シンジくんは依存から脱する。
暴走したときは理性も意識もぶっ飛んでるから、ここでは論外だけど。
たまに見せる決意をした時、シンジくんは神話に登場する英雄のように、せまりくる壁や障害、もっともわかりやすいのは使徒を撃墜するために、心から立ち上がる。

まわりから言われたからではなく、自分の意志で立ち向かう。
途中でくじけることも多いけど、最後までやり通した時、そこに感動を覚える。

そう、テーマソングの最後のフレーズ「少年よ神話になれ」は、まさに神話の英雄の旅をシンジくんが続けることで、シンジくんに神話(の英雄)になれと歌っているのだ。

あなたにはあなたの神話がある。
あなたにはあなたの英雄の旅がある。
それがあなたの人生だ。

■神話が果たす四つの機能

ジョーゼフ・キャンベルは神話が果たす四つの機能を以下のように話している。
1 神秘的な役割
2 宇宙論的な次元
3 社会学的な機能
4 教育的な機能

それぞれがどういうものなのかは本を読んでもらうことにして、ジョーゼフ・キャンベルはこの4つの中では、4番目の教育的な機能を最も重要視している。

それは教育的な機能、いかなる状況のもとでも生涯人間らしく生きるにはどうすべきかを教えてくれる機能です。神話はそれを教えることができます。
        『神話の力』第一章 神話と現代の世界p.94より引用

そして、人間らしく生きるには、あなたがあなたとして生きるには、自分の内側を見つめ、ただただ毎日を生きるのではなく、個人個人違う、あなたの自分の至福、無上の悦びを追い、ほんとうに生きている経験をして生きることだ。
また、自然と調和し、互いに思いやりの心をもつことだと、ジョーゼフ・キャンベルは本書で繰り返し言っている。

■この本を読んだら

なんでもいい。どこの国のものでもいい。
神話を読むことだ。
『古事記』『ギリシャ神話』『ケルト神話』『聖書』『インディアンの神話』なんでもいい。神話は数多くある。
この本に書いていることを頭の片隅に置きながら神話を読もう。

また、この『神話の力』は、情報量がとてつもなく多い。
そして、月日を開けて、数年おきに読み返すたびに、新たな気づきや発見がある。
どうか、一度読んだだけで終わらずに、数年おきに読み返してみてほしい。
その時、あなたに必要なことが見つかるはずだ。

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