三月は深き紅の淵を – 恩田陸

2018年3月7日

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■『三月は深き紅の淵を』は読むことができない

 ジャケ買いした本。タイトルも装丁も好きだな。今でも。
 この小説については(ミステリにありがちな言葉だけど)、ほんと多くを語れない。とりあえず言っておくと、タイトルの『三月は深き紅の淵を』は、読むことができない作りになっっている。
 稀覯本、幻の本と言われている『三月は深き紅の淵を』という本が存在する。ということが4つの中編に出てくる。そして、4つの中編は、それぞれが連携している。
 そんな、たった一人にたった一晩だけ貸すことが許された本をめぐる本。

 以下、目次の次はちょっぴりネタバレ含むので、未読の方は読まないように。

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■目次

第一章 待っている人々
第二章 出雲夜想曲
第三章 虹と雲と鳥と
第四章 回転木馬

■作中に出てくる作品は、その後出版されている

 この『三月は深き紅の淵を』の中には、いくつか作品名と作品の概要、登場人物について書かれた、他の作品が出てくる。
『麦の海に沈む果実』『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』『黒と茶の幻想』がそうだ。
 いずれも、同じ名前の登場人物が出てきたり、概要が同じだったりする。
 しかし、やはり『三月は深き紅の淵を』は読むことができない。
 読みたい。
 まさか、本当に恩田陸さんが私家本で出版しているとかってことはないだろうけど。

 第一章を第二章が飲み込み、第二章を第三章が飲み込み、第三章を第四章が飲み込み、最終的に第一章につながるという構造は、入れ子構造とか、マトリョーシカ構造って言ってた人がいたような気がするけど(曖昧ですみません)、私が思うに、ウロボロス構造の方が合ってるような気がする。
 ちなみにウロボロスってのはこれ
 ↓

ヘビは、脱皮して大きく成長するさまや、長期の飢餓状態にも耐える強い生命力などから、「死と再生」「不老不死」などの象徴とされる。そのヘビがみずからの尾を食べることで、始まりも終わりも無い完全なものとしての象徴的意味が備わった。
Wikipediaより引用

 第四章のタイトルが「回転木馬」だってのも、うなずけるわけだ。
 この第四章、恩田さんの執筆過程を書いているように読めるが、これすらも創作なのだろうか?もし、恩田さんの執筆の過程だったり、考え方なのだとしたら、けっこう貴重なものなんじゃないかな。恩田さんって、あまり執筆のことやプライベートのこと、書いたり話したりしないから。

 「物語に愛された作家」と言われている恩田さんの作品は、正直、合う合わないはある。
 この『三月は深き紅の淵を』は、私にとっての恩田作品ナンバー1。次が『麦の海に沈む果実』で三番目が『夜のピクニック』かな。
 恩田作品が好きだ、もしくは嫌いじゃない。けど、この作品は読んでない。
 それなら、ぜひ読むことをおすすめする。

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