dele3- 本多孝好

Contents

■死後に不要なデータを削除する。
なぜその人はそのデータを削除してほしかったのだろう。

自分の死後、人に見られたくないなどの理由で、パソコンやスマホ、タブレットなどに残っているデータの削除依頼を引き受けている「dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)」。
自分が死んだ後に消してほしいデータっていうだけあって、綺麗な話だけじゃない。っていうか、1作目の『dele』の最初の話から押し買いを取り扱っていて、なかなかヘビーなんだけど。
そうなんだけど、シリーズを通して伝わってくるのは「それでも生きている。それでも生きていく」ってことだ。
本書はシリーズの3作目。

ちなみに1作めと2作目の感想はこっちにあるから、そちらを読みたい方は下のリンクから飛んでほしい。

dele

dele2

今回は2つの物語が収録されている。
・『リターン・ジャーニー』
「dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)」の所長である坂上圭司(さかがみけいじ)が姿を消した。
かつて雇われていた真柴裕太郎(ましばゆうたろう)は、姉であり弁護士の坂上舞(さかがみまい)から話を聞き圭司を探す。
事務所に残されていた圭司のものではないノートパソコンには、ある企業のデータが残っていた。
圭司を探す裕太郎。
しかし、データは大きな陰謀と存在へ繋がっていく。

・『スタンド・アローン』
削除依頼が発動され、死亡確認をとるために電話をしたら、電話に出たのは依頼人だった。
「dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)」に依頼していたのは、誰からも愛されていた女子中学生。未成年の依頼は引き受けないのだが、女子中学生は父親のクレジットカードで依頼していた。
彼女の死を追っていくと自殺であることがわかった。
しかし、動機がわからない。
2人の友人、担任から話を聞き、圭司と裕太郎は彼女の家へと向かう。
彼女が削除依頼していたデータとは。

■目次

●リターン・ジャーニー
●スタンド・アローン

■いろんな事があるし、いろんな人がいる。
それでも生きていく。

今回は2つとも後味があまりよろしくなかったんだけど、それでも読後に残ったのは「それでも生きている。それでも生きていく」ってことだ。

私は人生100年と言われている現在でいうと、まだ半分も生きていない。
それでも、ここまで生きていれば、いろんなことがあったし、これからもいろんなことがあるのはわかってる。
もちろんいいことや楽しいこと、嬉しいことばかりじゃないってことも。

そして、自分自身も良いことばかりしてきたわけじゃない。
良くないことを言った、やったなと思う人もいるし、こともある。

聖人君子でいようなんてことは、もちろん言わない。
みんな仲良くなんてことも、もちろん言わない。
ただ、この10数年で日本はずいぶんと変わってしまった。いや、日本というより日本人がと言ったほうがいいか。

自分さえ良ければいい。
やばいことが起きたけど、やばいことをしてしまったけど、見つからなきゃいい。
大人だけじゃない。そういう子供も増えた。
生きていくうえで余裕がない。

思うんだけど、それは今のあなたに見えている世界がそう見えているだけじゃないのだろうか。
不安とか怖さとかもあるかもしれないけれど、学校や職場を変えるだけで、可能なら引っ越しもして、環境を変えると、場所も付き合う人も変わる。つまり、あなたに見える世界が変わっていく。

見なくてもいい、考えなくてもいい、聞かなくてもいい、持たなくてもいい、そういうものに振り回されてはいないだろうか。
個人的な話だけど、私は子供の頃から、流行を追うことはしなかった。
流行を知ることはした。
食べものや飲みもので新しいものを見つけたら、まっさきに食べたり飲んだりしたいし、美味しかったら美味しかったよと言いたい。
おもしろそうな本や映画も読みたいし観たい。おもしろかったら、すぐに言いたい。
けど、それは流行を追うこととは違う。

どれだけ話題でも、どれだけ流行ってても、私が気に入らなかったら、それについては何も言わないから。
聞かれたり、たまたま会話に出てきたら、美味しくなかった、おもしろくなかったっていうけど。
それは、どれだけ流行ってても変わらない。
流行っていうこの漢字を見てみて。
「流されて行く」んだよ。

はやっているものは、やがて流されて行く。
そして、はやりに流されていることに気づいていない人たちも、そのものと一緒に流されて行ってる。
流されて流されて、たどり着いたところには何があるんだろうね。

deleシリーズを読んで思うのは、繰り返すけど「それでも生きている。それでも生きていく」ってことだ。
私はどうせ生きるなら、生きていくなら、できるだけ自分が考えて、思って、選んで生きていきたい。
どう生きるかを自分で決めて、その生き方で生きていく。
流されるのではなく、変化は自分の生き方に沿って受け入れる。
自分自身が変わらなければいけないことも、これから先もたくさん出てくるだろうし、起きるだろう。
その時も、あくまでも自分の頭で、自分の心で考えて、感じて、選んでいく。

『リターン・ジャーニー』を読めばわかるし、まあ読まなくてもわかってる人はわかってるんだけど、ネットの情報はちゃんと調べないと真偽は定かじゃない。
ちゃんと調べてもわからないときも、けっこうあるけど。
まあ、メディアは昔っから怪しいけどね。
最近は報道すらしないことが多いけど、メディアが報道しないだけで、あなたが知らないうちに、けっこう重要なことや重大なことが決まったり起きたりしてるんだよ。

本多孝好さんの作品は、綺麗な話だけじゃないけど、それでも人と世界に対して、暖かさがあるから好きだ。
そこには、それでも希望や光は残っていると思わせてくれるものがあるから。

楽天ブックスはこちら→dele3 (角川文庫) [ 本多 孝好 ]

アマゾンはこちら→dele3 (角川文庫)