私の読書の履歴書9 高校生3

高校生の時から20代中盤くらいまでに読んだ本が、今でも心に残っているものが多い。
少しは世の中が見えてきて、自分の思いや考えも、ブレたり揺れ動いたりしていた時だ。
どう生きたいか、どう生きるか、どんな人間になりたいか。
そんなことを思い、考えながら過ごしていた時期だった。

かといって、そういうことを考えるような本ばかりを読んでいたわけではなく、あいかわらず火浦功さん、夢枕獏さん、H・P・ラヴクラフトは読んでいた。
夢枕獏さんのキマイラはたしか狂仏変か独覚変あたりまで進んでいて、火浦功さんは、ハヤカワ文庫のみのりちゃんシリーズを読んだ。

Contents

●ラブクラフト全集

東京創元文庫のラヴクラフト全集は全7巻、別巻2冊をこの時点で用意していた。
私が高校生の時点で6巻まで刊行されたんだけど、7巻がなかなか出ない。
6巻は1989年。なんと7巻が出たのは2005年だった。
別巻は2年後の2007年に上下とも刊行された。

やはり1巻の「インスマウスの影」だね。私にとっては、ここからクトゥルー神話が始まったって感じだ。
でも好きなのは2巻と3巻。
2巻は「クトゥルフの呼び声」「エーリッヒ・ツァンの音楽」「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」と、私好みの作品ばかりだ。
3巻は「無名都市」「戸口にあらわれたもの」「闇をさまようもの」「時間からの影」がいい。
4巻は「狂気の山脈にて」「宇宙からの色」「ピックマンのモデル」。
5巻は「魔女の家の夢」「ダニッチの怪」が好きだし、巻末の「『ネクロノミコン』の歴史」はクトゥルー神話ファンなら読まずにいられないものだろう。
6巻はいわゆる「ランドルフ・カーターもの」を読める。ラヴクラフト作品では珍しく、シリーズものになっている。
「ランドルフ・カーターの陳述」「名状しがたいもの」「銀の鍵」「銀の鍵の門を越えて」「未知なるカダスを夢に求めて」
と続くんだけど、「道なるカダスを夢に求めて」はホラーと言うよりは冒険譚だ。
しかも、これまたラヴクラフト作品では珍しく、ふつうにおもしろい。
とは言っても、この本の収録順に読んだから、おもしろさもわかったんだけどね。
7巻は久しぶりの出たこともあって期待値が高かったんだけど、個人的にはイマイチだった。
別巻の上下では『ク・リトル・リトル神話集』にも収録されていて、私が好きな作品がことごとく入っていたのが嬉しかった。
上巻は、イリザベス・バークリイ「這い寄る混沌」ズィーリア・ビショップ「イグの呪い」
下巻は、ヘイズル・ヒールド「博物館の恐怖」「永劫より」「墓地の恐怖」

ただし、ラヴクラフト作品は、読みにくい。ほんっと読みにくい。
形容詞が何行も羅列されて、何の形容かわからなくなりそうになったりとか。
ま、慣れればさほど時間を書けずに読めるようになるんだけどね。

 

 

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●怪奇小説傑作集

ラヴクラフト全集を買おうと書店に行くと、同じコーナーに並んでいるので、気になって買った本。
結果、当たりだった。

1、2、3巻が英米編。4巻はフランス編、5巻がドイツ・ロシア編。
1巻の猿の手、パンの大神、秘書奇譚は今やホラー読むならこれ読んどけっていうくらい、ホラー小説の古典的名作。それと、この1巻に収録されている異色作、J.S.レ・ファニュの緑茶が読めたのは嬉しかった。

で、まあ、ホラーもその人の個人的な好き嫌いや嗜好があるから、一概に言えないんだけど、私は2巻以降はどうもイマイチだった。でもあれだ、4巻は澁澤龍彦が作品よりも多いページ数で解説書いてたから、この解説読んだだけでも元は取れたみたいな感じを受けた記憶がある。

 

 

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●占星術殺人事件

友人が「これおもしろいから読め。いや、お前も買って読め」と興奮気味に言ってきたので、どれどれと買った本。
3分の2くらい読んだところで、え?ってなるんだけど、そこでいったん読むのをやめて、髪とシャーペンを用意して、もう一度読み返した。

若い6人の処女から、それぞれの星座に合わせて頭、肩、胸、腰、大腿部、下足部を切り取り、それらを合成して完璧な肉体を持つ女性「アゾート」を作成するという猟奇的な殺人が起きた。
しかし、事件は解決されず、迷宮入りとなる。
事件から40年後、その事件を知った御手洗潔が真相に挑む。
っていう感じで、話は進んでいく。

本格推理小説なんだけど、犯人はこの人かなってのはわかったんだけど、トリックと動機がまったく見当がつかなかった。
おもしろいんだよ、今でもランキングに入ってるし。
私が読んだのは旧版だったけど、今は改定完全版になって出てる。

御手洗潔シリーズの第一作でもあり、日本の本格推理の金字塔的作品だよ、ほんとに。

 

 

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今回はここまで。
いや、文学も読んでた。次回はそのへんを。