私の読書の履歴書20 20代前半7

今回はさっそく本題に入るよ。

Contents

●原田宗典さん

原田宗典さんの小説もエッセイも好きだったんだよ。
まあ、知ってる人は知ってるけど、やっちゃってしばらく表に出れなかったんだけどね。
長編よりも短編が好きだった。
『メロンを買いに』とかよかったなぁ。
短編が好きだったって言っときながらなんだけど『十九、二十(じゅうく、はたち)』という長編がある。まさに十九歳、二十歳っていう意味なんだけどね。

たぶんあなたが想像している青州小説じゃない。
だからこそリアルな感じで、やるせない気持ちになった作品だった。
『劇場の神様』もよかったなぁ。

なんかこう、人生ってうまくいかないものだ。でも生きてるんだっていう作品が多かった。
そういうところが20代前半の私にしっくりきていたんだよね。
やっちゃったせいで、今は本屋に文庫も単行本も並んでないんじゃないかな。
興味持ったら、古本か電子書籍で探してみて。

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復帰後の『メメント・モリ』からは本屋に単行本が並んでる。以前とは作風も変わったから、これから読んでもいいかも。
って、初めて読む作家の本を単行本で買うのは勇気がいるけどね。
私小説で、初めての人には重い内容なのにクスっとくるところをどう思うかだけど、以前の小説やエッセイを読んだことがある人なら「おかえりなさい」と思えるよ。

あぁそうそう、過去にやったことに対して「あんなことした人のものなんて」って思う人は読まなくてけっこう。
私は思うんだけど、過去にやっちゃったことを、まあ本人が反省もしないでヘラヘラしてたらそりゃあ受け入れないけど、本人が反省して、もう一度生きようと思ってるんなら、いいんじゃないかなって思うんだよ。
私だって、犯罪も法律も犯したことないけど、過去にいろいろやらかしてるし。
「じゃあ、もう一度頑張って」って気持ちでいいんじゃないかなって思うんだよね。
まあ、これも何をしたかにもよるけどさ。

『十九、二十』とかあのころ読んだ本のリンクをここに張りたかったんだけど、楽天ブックスもAmazonも古本の取扱しかなかったから、今回は例外として『メメント・モリ』にしておく。

 

 

Amazonはこちら – メメント・モリ

●夏の葬列

山川方夫の『夏の葬列』を初めて読んだのは記憶がたしかなら中学生の時だったと思う。
教科書に載ってる作品で好きだったのってほんっと少ないんだけど、この『夏の葬列』は好きだった作品のひとつなんだよ。
教科書にしては、作品自体短いこともあって、めずらしく全文掲載されてたのもよかったな。
でまあ、よかった好きだったって言ってるけど、話は主人公にとって残酷だ。

ある夏の日、主人公は出張で、少年時代に僅かな期間だけ過ごした場所へ行く。そこで、芋畑の向こうを一列に歩く葬列を見るんだ。
主人公は戦時中に疎開先でヒロ子さんという2歳年上の人と仲良くなったんだよ。ある夏の日、ヒロ子さんと並んで芋畑の向こうを一列に歩く葬列を見ていたら、艦載機がやってきて発泡してきた。
主人公は叫んでいる大人の男の言葉を聞いて、ヒロ子さんを突き飛ばしてしまう。
ヒロ子さんは弾に打たれ亡くなる。

ふと記憶から戻って、主人公は葬列に気づかれないように近づいて、葬列の中央の遺影が上に置かれた棺を見る。
28、9歳くらいの女性だった。
目をこらしてよくみると、遺影の女性はヒロ子さんの面影を残している。
それを見た主人公は、不謹慎ながらよろこんだんだよ。
なぜなら、あのとき、主人公はヒロ子さんを殺していなかったんだから。
で、主人公、葬列に加わっている少年に話しかけるんだけど、そこで知らされるんだ。
「なに言ってるんだよ、おじさん……」

って、真相を聞くんだけど、これがまあ、容赦ないっていうか、主人公にとって、そりゃまあ残酷な事実っていうか。

この本、集英社文庫の夏の一冊のキャンペーンで見かけて、懐かしさもあったから軽い気持ちで買ったんだけど、作品はどれもなかなかどうして、ハッピーエンドが少ないものが多いんだよね。
けど、心と記憶に残る作品も多い。
『夏の葬列』以外では『お守り』『待っている女』『煙突』が個人的には好きだというのではなく、残る作品だ。
数年おきになんとなく読み返したくなる本なんだよね、これ。

 

 

Amazonはこちら – 夏の葬列 (集英社文庫)

というわけで、今回はここまで。
『夏の葬列』のことを話しながらふと思ったんだけど、各出版社の夏の文庫キャンペーンあるでしょ。
あれ、夏ってこともあって、高校生か大学生くらいまでを対象に選んでるんだと思うんだよ。
古い本から新刊まで、純文学・エンタメ・ノンフィクション・ドキュメント・紀行文ってジャンルも幅広く選ばれてるし。
でね、私は20代まではほとんど小説しか読まなかったんだけど、これはほんと後悔してるんだ。
10代20代でもっと小説以外の本も読んどきゃよかったって。

この世界は知らないことわからないことだらけだから。
本を読むことで、世界にはこんな人もいて、こんな場所があって、こんな生活をしていて、こんな事が起きていたんだ。これはこういうことだったんだ、これは今はここまでわかってるんだ。
っていうことを知ることができる。
自分が見えている世界が広がるんだよ。

で、なにが言いたいかっていうと、各出版社の夏の文庫キャンペーン、まあ、あれだ資金とか色々あると思うけど、あのときだけでもいいから、小説以外のものとか、ふだん読まないジャンルとか、古いだけで難しいって先入観持ってそうな古典とか純文学とかを読んでみてほしいんだ。

そんな20代までで読んだ小説以外の本で、おもしろくてとまんなくて、これ読んでたときは何日もほぼ徹夜だったのが、沢木耕太郎さんの『深夜特急』なんだよ。
沢木さん自身が旅をした時のことを書いたものなんだけど、おもしろかった。すんげぇおもしろかった。
この本については、次回話す。

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