私の読書の履歴書11 高校生5

さて、今回は高校生の時に読んだ文学の続き。
と言っても、正直に言うと、文学の読み方なんてわからなかった。
昔の人が書いた小説くらいにしか思ってなかったし、良さなんて理解できてなかった。
それでも、時代を超えて伝わってくるものがある。
それは、時代性ではないし、知識でもないし、この世界がどうなってるかってことでもない。

他でもない、私たち自身、つまり人間の思いや考えだ。
前回、2回も話したから、今回は話さないと思ったけど、やっぱり話す。

これだけ科学が進歩して、進化してるのに、科学を進歩・進化させた人間の精神は、これっぽっちも進化も進歩もしてない。
何十年前、何百年前の文学や小説や詩を読んでも、いや、何千年前の神話を読んでも「あぁ、わかるなぁ」って思うからね。
登場する神々の言動に共感するからね。
「あぁ、やっぱこの時の人間って古ぃなぁ。こんなときにこんな感情持つなんてさぁ」
ってことはあまりない。いや、ほぼない。
あるとしたら、それは古い新しいではなく、合うか合わないか、どう思うかどう考えるかの違いじゃないかな?

SFだけど『夏への扉』って小説、あれ、おもしろいよぉ。心が暖かくなるっていうかさ。
猫が好きなら、あの本は好きだと思うんだよね。
ふだんSFは1冊も読まない人でも。
でもこの本は高校卒業後に読んだから、とうぶん後になるけど。
で、この小説、1956年の物語なんだよ。
いくらSFでも古く感じるものもある。でも、おもしろいし、感動したり、考えさせられたりするものはたくさんある。
そこには、人間が持つ普遍の悩みや迷い、思いがあるからなんじゃないかな。

と、前置きはこのくらいにして、本題に入ろう。

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Contents

●人間失格

ジャケ買いじゃなくてタイトル買いした本。
本屋でこのタイトル見て、手に取らない人はいないんじゃないかと思う。
「恥の多い人生を送ってきました」っていう文章がインパクト大きすぎる。

人前ではおどけてばかりで、本当の自分を見せれない、さらけだせない。
女性にモテる容貌をしているらしいし、頭もよさそう。
でも、自分をさらけ出せない自分は、他人とは違う=異質なのではないかという思いは消えない。

やがて、酒や煙草、女性や左翼思想に溺れていき、人妻と関係を持ったその夜、一緒に自殺を図るが、自分だけ助かってしまう。
その後、また女性に溺れたり、酒に溺れたり、あげくの果てにいけない薬に手を出しと、自ら人生の底へ向かっている感が、顔も頭もいいけれど、人としてダメ人間だなぁって思いながら、当時の私は読んでたんだよね。

この話、「はしがき」と「あとがき」は「私」の体験談で、第一・二・三の手紙が大庭葉蔵の手記という体裁をとってるんだ。
「あとがき」の最後の一文を救いと取るかどうかなんだけど、もしあなたがこの話を読んでいたんだったら、どう取ったかな?
まだ読んでいないのなら、読後にどう思うかな?

まだ読んでいないかもしれないから、私がどう思ったかも含め、ここでは話さない。
あまりにも有名なので、あちこちで見たり聞いたりした話で読んだ気になっているかもしれないけど、とりあえず一度は読んどいたほうがいいよ。

ちなみに角川文庫のカバーは文豪ストレイドッグスで、集英社文庫のカバーは小畑健さん。
カバーだけで見れば、親しみやすい。
ふだん文学を読まないのなら、こういうところから読むのは止めないし、むしろいいことだと思う。
ただ、私がおすすめするのは表紙がガチガチに硬い文春文庫。
なぜなら集英社文庫は280円+税、角川文庫は308円+税で『人間失格』一作だけ。
文春文庫は766円+税で「斜陽/人間失格/ダス・ゲマイネ/満願/富岳百景/葉桜と魔笛/駈込み訴え/走れメロス/トカトントン/ヴィヨンの妻/桜桃」と、11作収録されているから。
しかも、人間失格と斜陽だけ読んでたら知らずに損する、太宰のイメージが変わる話を集めているところに、編集の良さが伺えるから。

トカトントンなんて、なんじゃこりゃって思うよね。

 

 

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●斜陽

こちらも太宰治の代表作。
戦争が終わった昭和20年。
没落貴族となった直子と母、弟の直治、作家の上原、4者4様の滅びの物語と言ってもいいんじゃないかと思う。
滅びの美学と言ってもいいかな。

私は『人間失格』よりも『斜陽』の方が好きだ。
没落貴族の3人に上原という異物が入ってくるんだけど、この上原って、元セレブの3人に対して、庶民・一般的な社会として、没落貴族という元セレブを侵略するものとして描かれているんじゃないかなって思ったりしたんだよ。

『人間失格』のところでおすすめした文春文庫に収録されているので、あわせて読んでみたらいいよ。

 

 

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●走れメロス

教科書にも載ってたけど、作品として全部読んだ。
えっとね、友情のために走れメロスみたいになってるけど、なんかツッコミどころが多い。
夜に城を出発して、村に着いたのがあくる日。10時間くらいかけて到着なんだけど、その距離10里=40キロ。
フルマラソンより短いんだよね。

村に着いた日が妹の結婚式だったんだけど、メロスは疲れてたから、準備したら眠くなっちゃったんだよね。で、いろいろあるからって言って、その日は寝ることにして結婚式を一日伸ばした。
次の日、めでたく結婚式。
で、妹の幸せな姿見たり、酒のんで気持ちよくなったりしてるうちに、村から離れるのが嫌になってくるんだよ。城で友人が捕まってて、期限内に戻らなきゃその友人、やられちゃうのに。
けっきょくそのまま寝ちゃうんだよね。雨も降ってきたし。

そして3日目。
まず寝坊でやらかして、そのわりに急ぐでもなくゆっくり準備。
もうヤバイって思って、走る。やっとタイトルの出番だ。
走れメロスっ!

2里=8キロくらい走ったところで、疲れたのか、歩き出す。天気が良くて気持ちよくて歌なんて歌い出す。
5里くらいのところで、昨日の雨で川が反乱してる。
メロス、なんてこった!って落ち込むんだよね。
でもなんとか気持ちを立て直して川を乗り越えたら、山賊に襲われる。
メロス、なんとか山賊を倒すんだけど、なんてこった!って落ち込む。
ここでメロス、めんどくさくなってくるんだよ。どうでもいいって感じのことを思い始めるんだよね。
でまあ、なんとかしてメンタルを立て直して、いかにも村からずっと走ってみましたって感じで、期限ギリで城に到着。
友人は感動。王も感動。めでたしめでたし。

メロス、夏休みの宿題はギリギリで終わらせるタイプだったんだな。

教科書で習ったときはメロスいいやつだと思ったんだけど、高校のときに作品読んで、思ってたのと違ってたのがおもしろかった。
このことを、ふだん本読まない友人やクラスメイトに話したら、おもしろそうだから、本を貸してくれって数人から言われたよ。

これもさっきからおすすめしている文春文庫版に収録されているので、読んでみようと思ったらどうぞ。
『人間失格』『斜陽』とのギャップも楽しめるから。

 

 

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今回は太宰の他に宮沢賢治とか『変身』『異邦人』とかも話したかったんだけど、いつもよりも長くなってしまった。
結果として本も1冊しか紹介してないし。
ま、いいっか。

というわけで、また次回。

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