私の読書の履歴書13 高校生7

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●ドグラ・マグラ

高校3年生の夏休みだった。
なんとなく書店に行こうと思った私は、夏の日差しの下、自転車で向かった。
何を買うかも決めずに、また、単行本を買う余裕なんてないから文庫本の棚をなんとなく順番に眺めていたら、なんじゃこりゃ?というタイトルを見た。
『ドグラ・マグラ』だ。

手に取って背表紙を読むと「読めば精神に異常をきたす」みたいなことを書いている。
なるほど、これはおもしろいだろう。
と、さっそく冒頭を立ち読みしたら、文章が古い。
読むのをやめて、著者略歴を見ると、昭和初期の人じゃないか。でもおもしろそう。どうしよう。
表紙がどうしても抵抗を感じてしまったが、自分がどうしようと思っているときは、すでに読みたいと思っているのを自覚していたので、上下巻を一緒に購入。
小説は途中がイマイチだなと思っても、最後まで読まなきゃわからない。

古い文体に苦労したのは上巻の半分くらいまで。慣れてきたら、そこからはむしろ止まらなかった。
その後も、精神に異常をきたすこともない。そこは安心していい。

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いわゆる「新青年」に載っていた人だ。
ちなみに「新青年」は1920年から1950年まで発売されていた雑誌で、夢野久作の他には、江戸川乱歩や横溝正史、小栗虫太郎、甲賀三郎、国枝史郎、山田風太郎、久生十蘭など、現代から見ても異質な作家が集まっていた。

それと『ドグラ・マグラ』は3代奇書のひとつでもあるんだけど、他の2作は小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』だ。
なんで奇書なのかは、それぞれ理由が違う。

『ドグラ・マグラ』が奇書と呼ばれるのは、構成が一番の理由だと思うんだよ。トリックがっていう人もいるかも知れないけど。
ネタバレになるから言えないことも多いんだけど、いくつか話そう。

『ドグラ・マグラ』の作品内で『ドグラ・マグラ』っていうタイトルの文章を読むことになったりとか、時系列がまっすぐじゃなくて前後してたりとか、場面転換とか、まあ、そういうところなんだけどね。

それと、トリック・動機も、作品内で提示されるものは正確に言えば正解じゃない。あくまでも主人公「私」が辿り着いた結論っていうだけだ。

読んでもおかしくはならないし、それほど読みにくいものでもない。
読みにくさで言ったら『黒死館殺人事件』なんて大変だ。

それと、この3大奇書はあらすじも要約も、読んだところで内容はさっぱりわかってないようなものだから。
読まなきゃわからない。
『ドグラ・マグラ』はマンガも映画もあるけど、本と比べたらダイジェスト版をダイジェストしてるようなものだ。

余談だけど、数年前から「マンガで読む〇〇」ってのがけっこう出てるけど、あんなのは読む意味ないと思ってる。
読んだところでその本を読んだことにはならないし、あらすじや要約をマンガで読んだって、時間とお金を無駄にしているだけだ。
一度読んだけど内容が理解できなかった。私の忍耐力や思考力は、私の頭脳はそんなものですと理解しようという努力をしたくない人なら、読後に「マンガで読む〇〇」を読むのもいいかもね。
一番かわいそうだ、残念だと思うのは「マンガで読む〇〇」を原作読む前に読んで、原作を読んだ気になってる人。「マンガで読む〇〇」を読んで、原作読まない人だね。

私はそんなに頭良くないし、高卒だから大学で学ぶ、知識を体系化したりとか、知識や状況を俯瞰することは訓練してない。
でも、「マンガで読む〇〇」だけ読んで原作読んだ気になるのは間違いだってことはわかる。
なぜなら、原作読んだことがあるものの「マンガで読む〇〇」を数冊読んでみたことあるし、原作読む前に「マンガで読む〇〇」を読んで、その後原作読んでみたこともあるから。

この『ドグラ・マグラ』もマンガで読むあらすじみたいなものがある。
読んだこともある。
そのうえで言うけど、マンガ読まなくてもいいから、素直に本を読もう。

 

 

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●黒死館殺人事件

こちらも三大奇書のひとつ。
って『ドグラ・マグラ』のこと書いてたときから思い出してたんだけど『虚無への供物』だけ読んだことない。

で『黒死館殺人事件』なんだけど、今は河出文庫から出てる。
私が読んだのは社会思想社のレーベルだった現代教養文庫版の方。
って言っても、出版社と表紙が違うだけで文章は同じだから。
現代教養文庫といえば、中学生の時から遊んでたゲームブックの「ソーサリー」シリーズ。
何十回も遊んだなぁ。
現代教養文庫の他の人のゲームブックも、他の出版社のものも数十冊遊んだけど「ソーサリー」シリーズにはどれも及ばなかった。
いやあ、懐かしい。

さて、話を戻して、この本が奇書と言われるのは、トリックや動機じゃなくて、黒死館という館そのものであり、もう少し広げて言うとこの本そのものって言ってもいいんじゃないかな。

最初の2ページで読むの嫌になってくるから。
どこがって言うと、情報量。

衒学趣味(ペダントリー)がふんだんに盛り込まれているんだよ、この本。
神秘思想・占星術・異端神学・宗教学・物理学・医学・薬学・紋章学・心理学・犯罪学・暗号学と思い出しただけでもこのくらいの知識、情報が盛り込まれてる。

冒頭2ページには中世の建築に関する用語が羅列されてるし。

黒死館に刻まれている衒学趣味と、犯人の衒学趣味、それらを上回る探偵役の法水麟太郎の知識。
本を解読使用した人はこれまでも多数いて、黒死館の構造がおかしいとか、法水麟太郎の行動がおかしいとか、話の流れに矛盾があるとか、欠点はあるらしい。
らしいというのは、私はそこまで徹底して読んでないからなんだけど。

で、肝心のトリックと動機はここでは触れないとして、ただひとつ言えるのは「え?最初っから今までのすんげぇ知識とか面倒くささとかって、あれ?暗合とか暗号って、あれ?えぇ~」っていう感じだ。
ごめん、伝わらないよね。

『虚無への供物』は、読んだら感想書きます。なんかすいません。

 

 

黒死館殺人事件 (河出文庫)

というわけで、高校生編は今回で終わり。
中学生編同様、他にも色々読んだんだけど、記憶が曖昧なものが多い。
本も処分したものも多いので、手元になかったり。
Wikipediaとか検索で調べればいいんだろうけど、それじゃあ、あの時の感覚ってよみがえらないんだよね。

で、高校を卒業してからは、丸一年本を読まない時があったり、飯とトイレと仕事と読書しかしてなかったような時期があったりする。
どうやって区切ろうか考えてるけど、ま、てきとうにわけて、続き書いていくよ。

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