魂でもいいから、そばにいて(新潮文庫) – 奥野修司

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■3.11後に不思議な体験をした方々へのインタビュー集

東日本大震災。
死者・行方不明者18,000人あまり。
未曾有の大災害で、多くの方々が亡くなり、怪我をした。
大切な人をなくし、家も思い出の品もなくした方々。

その中で「亡き人との再会」や「亡き人の気配」を体験した方々がいる。
水没して動かないはずの携帯電話が光ったり、スイッチを入れなければ動かないはずのおもちゃが動く。
夢に出てきて言葉を残したり、行方不明だったご遺体が見つかる直前に何らかのお知らせをしてきた方もいる。

この本は、けっして「怖い話」ではない。
亡くなった方が残した、伝えたかった、送った言葉や思いと、それを受け取った生者、残された方々の思いだ。

霊の存在やこのような体験を信じない人にも、読んでもらいたいと思い、紹介することにした。
読後の感想と思いは目次のあとで。

■目次

旅立ちの準備
春の旅
1 『待っている』『どこにも行かないよ』
2 青い玉になった父母からの言葉
3 兄から届いたメール
4 『ママ、笑って』-おもちゃを動かす三歳児
5 神社が好きだったわが子の跫音
夏の旅
6 霊になっても『抱いてほしかった』
7 枕元に立った夫からの言葉
8 携帯電話に出た義兄の霊
9 『ほんとうはなあ、怖かったんだぁ』
10 三歳の孫が伝える『イチゴが食べたい』
秋の旅
11 『ずっと逢いたかった』-ハグする夫
12 『ただいま』-津波で逝った夫から
13 深夜にノックした父と死の「お知らせ」
14 《一番列車が参ります》と響くアナウンス
15 あらわれた母と霊になった愛猫
16 避難所に浮かび上がった「母の顔」
旅のあとで

■霊・霊体験を信じるか信じないかじゃない
体験した方々の思いは本物だから

この本に書いてあることを信じるか信じないか。
霊の存在を信じるのなら、書いてあることをそのまま読んで、何かを受け取ったらいい。

霊の存在を信じなくても、この本を読んでほしいと思う。
なぜなら、この本に書いてあることを体験した方々の思いは本物だから。
大切な人を失った思い。霊でも夢でもいいから、魂でもいいから、そばにいてほしい、もう一度会いたい。
霊の存在を信じていなくても、こういう思いは多くの人が抱くんじゃないかな。

私は東日本大震災ではとりたてて被害は受けなかった。
数日間停電になり、仕事でいろいろあったくらいだ。
この本に書いてある方々と比べたら、被害はないに等しいと思っている。

でも、ずいぶん前のことだけれど、大切な人を亡くしている。
1人は20代前半に。もう1人は20代後半に。
この文章を書いている時点で、私はアラフィフだけれど、2人を亡くしたことの思いは、亡くしたときからずっと、今でも、私の中のどこかにあって、ときどき後悔や反省をともなって浮かび上がってくる。
あの時ああしてれば、あの時こうしてれば。
あの時のあのことは、こういうことだったんだ。
なんで気がつかなかったのだろう。
なんで寄り添えなかったんだろう。
自分は、なんて未熟だったんだろう。自分の気持ちしか考えていなかったんだろう。
いろんなことが、いろんな思いと共に浮かんでくる。

それでも、私はこうしてのうのうと生きていて、やがてくる時に向かって生きていく。

お互いに生きていても、別れが来るときもある。
大切な人なのに、相手のことを思いやれなかったり、自分では大したことではないと思って言った、たった一言が相手を傷つけてしまったりする。
同じ過ちを繰り返したこともある。
そのたびに後悔したり、反省したりする。

でもね、やっぱり私はこうして生きてるんだよ。
生きてれば、いろんな困難もあるし、壁もあるし、しがらみもあるし、人間関係もうまくいかないときもある。
この先どう生きればいいのかわからなくなるときもある。
夢や希望をもって進んでいても、これでいいのかって思うときもある。
そんな日々が続いていても、ふと光が差したり、雲が晴れたり、力が湧く瞬間がある。
それは、誰かと話しているときにやってきたり、本を読んでいるときだったり、音楽を聴いているときだったり、映画を観ているときだったり、外を歩いていてなんとなく見えた言葉、なんとなく聞こえてきた言葉だったりする。
厳しいけれど、奥に優しさや愛を感じる言葉を直接言ってくれる人がいたりする。
立ち止まって空を見上げたときに、突然思いや言葉が浮かぶときもある。
そのたびに思うんだよ。
もうちょっと生きてみよう、もう少しがんばってみよう、やり方を変えてみよう、接し方を変えてみよう、気の持ち方を変えようって。

そして思うんだ。
世の中捨てたもんじゃないって。

亡くなった人への思いを抱えて、今日も生きていく。
前へ進む。

この本を読んで、改めて自分の生き方を、生き様を反省した。
なかなか変えられないね、自分ってのは。
けど、変えるべきところは、変えなきゃいけないところは変えなきゃ。変わらなきゃ。

ちゃんと生きなきゃ。

だって、もっと生きたかった人々へ、もっと生きるべきだった人たちへ申し訳ないよ。

自分の人生を生きよう。
それはわがままに生きるのとは違う。誰かのためだけに生きるのとも違う。
楽しいこと、嬉しいこと、辛いこと苦しいこと、いろいろある。
そういうのも全部ひっくるめて、自分の人生を生きよう。
ちゃんと生きよう。

最後に。
東日本大震災だけが災害じゃなかったことだって、ちゃんと覚えている。
阪神淡路大震災、西日本豪雨、熊本地震、北海道地震、台風。
災害だけじゃないことだって、わかってる。
亡くなった方々のご冥福をお祈りします。

そしてやっぱり思うんだよ。
生きているからには生きなきゃ。生きていかなきゃって。

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