アイの物語(角川文庫) – 山本弘

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■物語の力を知る、すべての読書好きへ

SFが苦手、とっつきにくいと思っているあなたへも、この物語は強くおすすめする。
帯にもあるとおり、久しぶりに物語の力を感じた小説だから。

私もそれほどSFを読んでいないし、正直、読んでてよくわからないところや慣れない部分もあった。
あったけど、そこはそれ。
ほら、古典とか文学とか、時代小説とかエンタメだって、わからないところはわからないなりに読んでるよね?

この本が単行本で刊行されたのが2006年。文庫化されたのが2009年。
けど、今こそ読んでほしい。
って、気持ちばっかり言ってるけど、理由はこれから話すよ。

まずはネタバレしない程度にあらすじを。

時は未来。
人類が衰退し、地球上の人口は激減し、マシンが君臨している。
人々はAIが供給している倉庫や貨物列車から、食料などの物資を盗んで生き延びていた。
いつもどおり食料を盗んで逃げている途中、僕の前に、一体のアンドロイドが現れる。
美しい姿をしたアイビスと名乗るアンドロイドは戦闘に特化されていて、僕は戦いの末に捕らえられる。

動けない僕はマシンが建てた病院に入院するが、そこへアイビスがやってきて、僕に物語を語って聞かせる。
どの物語も、ロボットやアンドロイド、仮想空間を題材にしたものばかり。

アイビスが僕に物語を聞かせる理由とは?
なぜ未来に人は衰退し、マシンが君臨したのか?

って言っちゃうと、やっぱり無理とか思っちゃうかもしれないけど、いや、ほんと読んでほしい。
人と機械・AIとの関係。
人とは?ってところまで描かれている物語なんだよ。
泣く以外の感動を久しぶりに感じた本だったんだ。

もう少し詳しく話したいけど、とりあえずそれは目次のあとで。

■目次

プロローグ
インターミッション1
第1話 宇宙を僕の手の上に
インターミッション2
第2話 ときめきの仮想空間(ヴァーチャル・スペース)
インターミッション3
第3話 ミラーガール
インターミッション4
第4話 ブラックホール・ダイバー
インターミッション5
第5話 正義が正義である世界
インターミッション6
第6話 詩音が来た日
インターミッション7
第7話 アイの物語
インターミッション8
エピローグ

解説 豊崎由美

■「だってこうだから」とあきらめるのではなく
「じゃあどうしようか」と考える

AIが人類を超える=シンギュラリティは近いとか、いやそんなものは来ないとか言われてるよね。
シンギュラリティが訪れたら、人はAIに支配されるとも。

SFにはあまり詳しくないっって言ったし、AIにもそれほど詳しくはないんだけど、それでも思うんだよ。
AIだって、そもそもは人がプログラムしたものだってね。
プログラムを組む最初の時点で、人に危害を加えないことを絶対条件にすればそれでいいんじゃないかっていうのは、短絡すぎるのかな?

この『アイの物語』には人の愚かさが書いている。
最初から読み、そのページが来たら、その文章が効果が出るように書いているので、ここでは言わないけど。
ちなみに私が好きなのは第6話の『詩音が来た日』と第7話『アイの物語』だ。
プロローグ、インターミッション1、第1話と順番に読み進めたからこそ、この2つの物語が響いたんだよ。
本当に、本心からおすすめしたいのは、この2つの物語に込めれられている。
今ここで引用したいんだけど、こういった理由があるからしない。っていうか、できない。

ちなみにだけど、僕が心に響いた文章を、豊崎由美さんが解説でも引用していたので、この本を読み終わったあとに解説を読めば、それがどの章のどの部分かわかってもらえる。

人間の愚かなところと、人間にしかできないこと、そして、今後進化し進歩したときのAIとの向き合い方もわかる。

ただし、最初のプログラムするときに、何を設定するか、何を成約するかは、けっきょくは人間しだいなんだけどね。
無人の飛行機が人を撃つことだって可能なんだから。

でも私は、この物語のような世界になってほしいと願う。

p.s.作中に松田聖子さんの『瑠璃色の地球』が出てくる。この歌もすばらしい、素敵な歌だ。Mr.Childrenの『掌(てのひら)』とあわせて聴いてほしい。
そして、世界中の人がこの2曲の歌詞のように生きれたら、人間は、世界は、今よりずっと素敵なものになるだろう。

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