アイネクライネナハトムジーク – 伊坂幸太郎

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■出会いって、ないんじゃなくて見逃してるんじゃないか

伊坂幸太郎さんの作品を読むたびに、人生も世の中もそれほど悪くないって思う。
深刻なことや苦しいこともあるけど、深刻なことを深刻に思ったり考えちゃったりするから、心が沈んでいくし、気持ちも暗くなる。
苦しいことを苦しいって思うから、けっきょく苦しくなってしまう。

そんなときこそ、嘘でも無理やりでもいいから、笑ってみる。力を抜いてみる。
そうすると、やらなきゃいけないこともあるし、謝らなきゃいけないこともあるし、反省しなきゃいけないこともあるけれど、なんとなく気が楽になる。

この『アイネクライネナハトムジーク』は連作短編集で、重要度、深刻度のレベルはそれぞれだけど、そういう状況の中でも、ふと訪れる出会いや、微かな光があるんだってことを、教えてくれる。
登場人物は不器用な人ばかりだ。
本人は真剣なんだろうけど、そういう不器用さがおかしくもあり、「わかるわかる」っていう気持ちにしてくれる。

そんな人たちが、連作短編を読むにしたがって、直接つながっていたり、間接的につながっていたりしているんだけど、このつなげ方が伊坂幸太郎さんらしいというか、微妙なところを突いてきていたりして楽しいんだよ。

「ナハトムジーク」は時間があちこち飛ぶから、油断するとすぐに見失う危険性があるけど、それもまたおもしろいところだったりもするんだけどね。

■目次

アイネクライネ
ライトヘビー
ドクメンタ
ルックスライク
メイクアップ
ナハトムジーク
あとがき
解説 吉田大助

■因果応報

伊坂幸太郎さんの作品では、因果応報をみかける。
過去に良くないことをした人には、すぐに、または数年、数十年を経て良くないことが起きる。
この『アイネクライネナハトムジーク』でも「メイクアップ」でそれを見る。

人はそんなに変われないってことなのかな。
変わろうとするところに、これまたおもしろさやおかしさが生まれているのも伊坂幸太郎さんの作品にはある。

不器用でも一所懸命生きている人たち。
その人たちを、ちょっとしたことや、いろいろと考えたりして助けているのは、友人であったり、知り合いであったり、職場の同僚や上司や後輩だったりする。

けっきょくのところ、人との繋がりなんだなぁってことも思ったりするんだよね。
繋がりを良くするのも悪くするのも、それは自分自身だ。
今が辛いから苦しいからと、誰かに八つ当たりしたり、そんな自分の気持ちをぶつけたら、それは後に自分に返ってくる。
話を聞いてくれるだけでも、相談にのってくれても、そういう人に感謝する。
その人にそういうことが起きたら、その時は自分が相談にのったり、できることがなければ話を聞くことだけでもする。
そういうのって、大事なことだよね。

と、わかったようなことを言ってるけど、私はどちらかというと、自分に起きたことは自分でなんとかするものだと思って生きてきた。
これって、勘違いや失敗する確率が格段に上がるんだよね。
なぜなら、私はそう思いながら、同時に生き方も恋愛も手先も不器用だから。

どうしようもなくなってから話したり相談するから、いつも最初に言われる言葉は「何でもっと早く言わなかった」だ。
いや、でも、自分でなんとかなると思ってたから、ゴニョゴニョなんて言ったりすると、さらに怒られる。

そりゃそうだ。
私だって、誰かがそこまで行き着いてから話してきたら、同じことを言う。絶対に言う。
って、わかってるんだけどね、やっぱり人はそんなに簡単には変われないものだね。

だから、こういう『アイネクライネナハトムジーク』みたいな作品を読むと、楽しいしおもしろいんだけど、読み終わって、振り返って、一通り楽しんだあとに、いつもいつも思うんだよ。
他人事じゃないんだよなぁって。

二度と繰り返さないって、あんなに強く決意したのに、何度繰り返したことだろうか。
特に恋愛で。

とはいえ、じゅうぶんに反省して、今度こそ同じことは繰り返さないぞって強く決意して、最後はとりあえず笑っておくんだけどね。

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