バッタを倒しにアフリカへ – 前野ウルド浩太郎

2019年1月16日

Contents

■バッタが大好きなバッタアレルギーの昆虫博士

私は高卒で、現在の博士の資格を持つ人たちの事情をよくわかっていないんだけど、この本を読むと、どうやら少ない椅子を巡って壮絶な椅子取り合戦がおこなわれているらしい。

著者の前野ウルド浩太郎さんは、子供のときに『ファーブル昆虫記』を読んで昆虫博士になろうと決め、その後、バッタを追いかけていた。
バッタが好きすぎて触るとじんましんが出るバッタアレルギーになってしまっても、バッタの研究を続けたい。
なぜなら「バッタに食べられたい」という夢があるから。

博士として研究を続けるには、どこかに雇ってもらわなければならないらしいけど、それはさっきも言ったとおり、狭き門。それまでは数年という任期付きで、あちこちに雇ってもらうことになる(更新があるところもあるらしい)。
しかし、バッタの研究はマイナーで、なかなか雇ってもらえそうにない。
そこで著者は考えた。
アフリカでバッタの大量発生の被害について研究して、なくすことができれば、世界貢献にもなる、すばらしい研究になるんじゃないか。

室内でだけ研究をしてきて、フィールドワークは未経験。公用語のフランス語もまったく勉強しないまま、前野ウルド浩太郎さんはモーリタニアに向かった。
アフリカに大発生し、干ばつを起こすサバクトビバッタの問題を解決するために。
自分が子供の時から本当にやりたかったことをやり、やり続けるために。

そこには修羅の道ともいえる、数々の困難と問題が待っているとも知らずに。

この本は、将来が見えない一人の昆虫博士が、本当にやりたいことをやるために、やり続けるために過ごした日々の記録だ。

■目次

まえがき
第1章 サハラに青春を賭ける
第2章 アフリカに染まる
第3章 旅立ちを前に
第4章 裏切りの大干ばつ
第5章 聖地でのあがき
第6章 地雷の海を越えて
第7章 彷徨える博士
第8章 「神の罰」に挑む
第9章 我、サハラに死せず
あとがき

■本当にやりたいことをやる、やり続ける覚悟

世の中、本当にやりたいことをやろうよ、あなたの幸せのために。
っていう人がたくさんいるし、そういうことを書いている本がたくさんある。
もちろん、それは思うのもやり始めるのも簡単だ。

でも、それをやり続けることと、それで生きていくことには困難や壁がこれでもかというほど待ち受けている。
多くの人は、困難や壁を乗り越えられずに疲れ果てたり、挫折したり、あきらめる。

ところがこの本の著者、前野ウルド浩太郎さんはどんな障害にぶち当たっても、本当にやりたいことを続ける選択をする。
公用語のフランス語がわからなくても、実績がほとんどなくても、ときに無収入になっても。
バッタを研究しにモーリタニアに行ったのに、バッタが見つからなくても。
その時その時で、どうしたらいいのかを考え、失敗しながらでも、やり続ける。

私は思うんだけど、本当にやりたいことをやるってことは、それだけの覚悟ができているかどうかなんじゃないだろうか。

前野ウルド浩太郎さんは、その覚悟ができている。
そして、立ちはだかる壁を乗り越え続ける。
その結果、この本の第七章以降に、一筋の光として見えはじめ、その光はしだいに強くなっていくのがわかる。

この本に出会えて良かった。
著者が若いとかそういうことじゃない。
人生、自分が腐ったり、ふてくされてたり、あきらめたら、そこでおわりだ。
それは、夢があるとかないとかじゃない。

自分の人生をどうするかは、けっきょくのところ、夢があるないにかかわらず、自分がどう生きたいか、そのためにどうするのかってことを、考えて行動するだけだ。
自分の外側からやって来る何かを待っていたり期待していても、それはいつ来るかわからないし、生涯やってこないかもしれない。
こんな自分を誰かが何とかしてくれるなんて、甘えてるだけだ。
だって、そうじゃない?
国や地方自治体が、自分ひとりのために税金使うはずない。何らかの制度があるかもしれないけど、それだって調べたり、じっさいに聞いてみなきゃわからないじゃないか。
自分で考えて動くしかないんだよ。
失敗したり、ダメなときのほうが多いだろうけど、それでもじゃあ次はどうしようかとあきらめずに、考えて、進むことだ。
ってこれ、当たり前のことなんだけどね。

楽天ブックスはこちら→バッタを倒しにアフリカへ [ 前野ウルド浩太郎 ]

Amazonはこちら→バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

スポンサーリンク