ラダックの星 – 中村安希

2018年6月7日

Contents

■旅の目的は「人生観をその根底からひっくり返してしまうような、ものすごい星空に出会うこと」

『インパラの朝』で第7回「開高健ノンフィクション賞」を受賞した中村安希さんの紀行ノンフィクション。
仕事から、社会の喧騒から離れ、自分ひとりのための旅。
そして旅の目的はひとつ。

「人生観をその根底からひっくり返してしまうような、ものすごい星空に出会うこと」

今は亡き友人、ミズキとの思い出、ミズキへの想い。
友人の死と向き合い、自分と向き合いながら旅を進める。

はたして、人生観をその根底からひっくり返してしまうような、ものすごい星空に出会うことはできたのか。
また、ミズキの死をとおして、何を思い、何を考え、どこへたどり着いたのか。
星空を追いながらラダックを巡り、友人の死と向き合った、28日間の記録だ。

なお、この本は、2018年5月16日現在、発売されていない。
潮出版社から2018/06/05に刊行予定だ。

どうして発売前の本を、出版関係に勤めていない私が読めたかと言うと、発売前の本が読めるサイト、
NetGalley

https://www.netgalley.jp/

このサイトでリクエストして、出版社から許諾を得て、電子書籍で読んだからだ。

登録は誰でもできる。
繰り返すが、私は出版関係の仕事をしていないし、書店にも勤めていない。
こうして読んだ本の感想を書いているだけだが、それでも無料で登録できた。
この『ラダックの星』は、NetGalley登録後、2冊目だが、リクエストを断られたことはない。

本好きならわかってもらえると思う。
発売前の本が読めるという特権の価値と優越感を。

興味があるのなら、こちらから登録してみたらどうだろう?
NetGalley

https://www.netgalley.jp/

さて、話を戻そう。
『ラダックの星』を読んだ私の感想。

スポンサーリンク


■私がこの本を読んですぐに思ったこと
 「それでもこの世界は、思っている以上にいいところだ」

思い出というのは、自分の脳が勝手に増幅したり縮小したりするそうだ。

綺麗な思い出、嬉しい思い出、楽しい思い出はより綺麗に嬉しく楽しく。
嫌な思い出は、さらに嫌なものに。

または、綺麗だったり嬉しかったり楽しかったはずなのに、そうでもないものになっていたり。
あれほど嫌だった、辛かったはずなのに、時の経過とともに、その思いが薄くなっていたり。

もしかしたら、私がそう思い込んでいるだけなのかも知れないけど、
それでも変わらない思い出だってあるじゃないかな。

この本では、思い出についての記述も、ほとんどが感情を削って書いてある。
ノンフィクションとして、起きたことを起きたまま書いてある。
それでもそこに、喪失感や懐かしさや感傷をともなって読んでしまうのは、著者の腕の良さであり、私の読者としての質の問題だろう。

なぜなら、この記事の冒頭でも話したけど、この『ラダックの星』は紀行ノンフィクションだ。
旅の目的は「人生観をその根底からひっくり返してしまうような、ものすごい星空に出会うこと」で、著者の中村安希さんが、インドのラダック周辺の山に登り、出会った人々との交流や、星空を観察し、撮影する行程が書いてある。
それと共に、亡くなった友人との思い出が語られ、友人の死と向き合っている。

旅の道中に会う人たちのさりげない優しさ、なにげない優しさがいい。
薄紫の薬をくれた韓国人や、帰りを待っていた宿の人、一緒に旅をするのを断っておきながら、まだ到着していないことを心配していた、ツンデレなスウェーデン人。最後に登る山のガイドさんとドイツ人。

これは私がそういうものばかり目にするからかもしれないが、日本で生きていて、テレビ・インターネット・新聞などに触れていると、世の中が狭く、苦しく、重いものに感じることが多い。
しかし、インターネットで能動的に、自分の意志で、海外のサイトや記事の日本語版や日本語訳を読んだり、こうした紀行文を読むと、世界って思ってる以上にいいものだと感じる。

もちろん、事件や事故に巻き込まれることもあるだろう。
行方不明になってしまう人もいるのだろう。
テロだって、なくなることはないのだろう。

こういう本を読んだり、テレビやネットの動画を見て、素人がふらっと行けるものでもないことも重々承知している。

それでもやはり思う。
この世界は、思っている以上にいいところなんだって。

出会ってよかった本だった。

楽天ブックス – ラダックの星 [ 中村安希 ]

Amazon – ラダックの星

スポンサーリンク